彼は、理想の tall man~first season~
chapter.09
振り向いてあったその顔に、思わず「うわっ」と声が漏れた。
うわってなんだよ――。
そう返されつつ、「偶然だな」と。
後ろに立っていたのは、感謝したらいいのか、罵声を浴びせたらいいのか――微妙な立場になった晃が立っていた。
「もう、いきなりビックリするでしょ」
「お前が呼んでも振り向かないから、追っかけてきたんだよ」
「あ、そうだったの?」
「なに、今帰り?」
「そう」
「美紗がこんな所いるなんて、珍しいじゃん」
「ちょっと、仕事のお使いで」
「へぇ」
「今日は直帰でさ、まさに直帰中だったとこ」
ふーん、て感じだった晃は、スーツ姿で、企業展示会を見に行った帰りだと教えてくれた。
壁際に寄り、顔を見合わせ。
前に会ったのはいつだったかと考えた。
1ヶ月半振りくらい?
んー、なんて考えていると。
「この間の日曜、尚輝に緊急出動してもらっちゃったから、美紗には侘び酒奢ってやろうかって思ってたんだけど?」
晃は私に顔を近付け、覗き込んで来た。
近くにあったその顔に、私は不覚にもドキッとさせられた。
「な、なに――奢ってやろうかって。どんだけ上から目線よ」