彼は、理想の tall man~first season~

それから間もなくして、見慣れぬスタッフが、ウィスキーのストレートを2つ運んで持って来た。

それを飲みながら、お互いの仕事の話をしたり、この間のバスケの試合の話をしたり。


晃は相変わらずグイグイ飲む。

ウィスキー好きが、自分の土俵で負ける訳には行かない、なんて思って。

私は引っ張られる感じで、晃と同じ分だけ飲んでいた。


金曜の夜ということもあり、店内満卓状態。

居酒屋独特のガヤガヤした雰囲気に、なんとなく飲まれつつあった時――。


「尚輝から聞いた」

「何を?」

「お前、尚輝から尚輝の上司紹介されたんだろ?」

「――え? ああ、うん。そうなんだよね」


話そうか話すまいか――頭の片隅で思い悩んでいた話を、尚輝から仕入れたらしい晃は突然思い出したかの如く聞いてきた。

それは、いきなり過ぎて、自分のタイミングで話そうか悩んでいた話だったから、私を動揺させるには、充分だった。


「どうだった? 結構美紗好みの男だって聞いたけど」

「――まあ、それなりにいい感じの人だったけど」

「ふぅん」


自分から振って来た話なのに、晃は急に不機嫌な感じ――。
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