彼は、理想の tall man~first season~

ただ、いい方向の話じゃないことくらい、晃の雰囲気から伝わって来て。

私は変な緊張感に支配されていた。


晃は、私が遠回しに言おうとしていたことを、先回りでダイレクトに言って来て。

しかも、それは許さないとも取れる雰囲気。

そこには、私のことをいつも理解してくれていた晃はどこにもいなくて。

だから、私は――どこまでも動揺した。


「なあ、美紗」

「――っ、なに?」

「お前、ハッキリ言わねぇと、やっぱ分かんねぇ女みたいだから、この際だし、言わせてもらうけど」

「う、ん?」


グラスを見つめていた私は、ただならぬ晃の雰囲気に、視線を晃に移した。

そして、射抜かれるんじゃって思うような、そんな強い瞳を私に向けて来た晃は――


「俺は、好きでもない女は、絶対に抱かないからな」

「――ぇ?」


ハッキリとした口調で、私にそう言って来たんだ。


まさかだったその言葉に、一瞬頭が真っ白になり。

心臓はドクンドクンと、大きな波を立てていた。


「そこまで言って理解出来ない程、美紗はバカじゃねぇよな」


真剣な眼差しは、冗談で言っているようには思えなかった。
< 144 / 807 >

この作品をシェア

pagetop