彼は、理想の tall man~first season~
意識を立て直そうとしていた、そんな最中――
「美紗は、男は俺しか知らねぇって言ってるけど、俺も女はお前しか知らねぇんだよ」
意外にも純情だったらしい晃の声が、切なく頭の中に響いた。
私の初めての相手は、晃で。
晃の初めても――私だったってこと?
初めて知ったその事実に、なんだか泣きたい気持ちになった。
中学の時の、あの一件で、どんな気持ちで私が晃への想いを断ち切らなければならなかったのか、この男は解ってなくて。
挙句の果てに、好きみたいなことを今更言って来て、私の気持ちを混乱させて。
だけど、今更なによって、そんな気持ちを抱く反面――もしかしたら、晃はずっとそういう気持ちを抱いてくれていたのかと思うと、どこか報われたような気持ちにもなって。
――とても複雑な心境だった。
私の初恋は、他でもないこの藤堂晃だった。
いつも尚輝と一緒だった私は、同学年の男子が、素敵男子には全く見えなくて。
だけど、中学生になって間もなく、転校して来た晃が、何故か尚輝以上に、かっこ良く見えたんだ――。
当時は尚輝よりも背が高くて、スポーツマンに相応しく、爽やかで。