彼は、理想の tall man~first season~
chapter.10
「あの時は、尚輝の手前、本当のことが言えなかった」
「――え? なんでそこに尚輝が出てくるの?」
「中2ん時だったか――尚輝に彼女が出来た時、お前超嫌がってたじゃんか?」
「あ、うん。あったね、そんなこと」
それは、尚輝に初めて彼女が出来た時のことだ。
確かその子は、尚輝と同じクラスで。
尚輝に彼女とか、そういうことになんの心の準備も出来ていなかった私は、尚輝がその子と手を繋いでいた姿を見ただけで、激しい嫌悪感に襲われて。
恥ずかしながら、嘔吐したという経験があったりする。
兄妹でも当たり前に同級生だから、いつも一緒だったのに。
尚輝のその姿に、なんだか爪弾きにされた気分で。
尚輝がその女の子と、キスとかその先のこともするかも知れないとか、そういう事も考えちゃって。
この世の終わりがやって来たと感じたくらいに、酷く落ち込んで、塞ぎこんだ時があった。
だけど、大人になって行くということは、尚輝と別々の人生を歩むとこになるんだって。
そのことを、ゆっくりだったけど自分なりに消化して。
晃にはその当時、よく愚痴を聞いてもらったりしていた。