彼は、理想の tall man~first season~
「あー、オヤジ、やっぱ今のなし。ボトルで頂戴」
今日はとことん飲む気らしい。
「美紗は、尚輝が女と付き合い出してからおかしくなるし、林とか騒ぎ出すし――結局、尚輝の奴、女と直ぐに別れたろ?」
「あーそうだったね。長続きしない奴だって印象は大だった」
別れたと噂を聞いて、どれだけ胸の中がスッとしたことか。
だけど、そんなに大して長くも続かなかった尚輝に、少しだけガッカリもしたんだ。
嬉しいのに、なんていうか、男としてどうなの、それって――みたいな。
なんだかとっても複雑な気分も抱いたんだ。
「あれは、尚輝のそういう複雑な心情が絡んでたからだよ」
「そうだったんだ」
初めて知った過去の話は、尚輝のことを解っていた気でいたけれど。
知らない一面に私もまだまだだなんて、思わされた。
「お前は、昔から男に人気あったかんなー」
「――はぃ!? なにそれ? 私知らないけど?」
「美紗のこと目ぇ付けてた男は多かったんだよ。けど、あの頃の美紗にはそれを言わせない雰囲気があったからな」
「え? なに、そうなの?」
中学の時にモテた記憶なんて全くなかったから、驚きしかなかった。