彼は、理想の tall man~first season~

飲み過ぎた所為と、晃の話に動揺したからかな。


「ここまで、話す気なかったけど、言っちまったな」

ダメだな俺――なんて言って煙草を吸っていた晃の横顔は、当時よりも大人の男の横顔で。

煙草の煙に軽く目を細めたその横顔に、ドキッとさせられた。


「なぁ、林って、まだ教師してんかな?」

「んーどうだろうね」


林先生なんて、失礼だけど本当にどうでもよかった。


「お前、何気に告ってたりとかしなかったん?」

「はぁ? する訳ないし」


それでも聞いて来る晃に、なんだか無性に腹が立って来た。


「なに、キレてんだよ。別にもう昔の話なんだから、暴露してもいいだろ?」

「私が林先生に告白とか、ありえないし」


晃の知ることのなかった本心。

私にも言っていない本心があるから、過去を掘り下げて突っ込まれて聞かれても、言いようがないんだけど。

ただ、あの頃の悩みはなんだったのかって気持ちが、かなり湧き出て来て。


「私があの頃好きだったのは、晃だったんだから、林先生に告白なんてありえないでしょ」


ムカつきついでに、私も10年目の真実って感じで。

勢い任せに言ってしまった。
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