彼は、理想の tall man~first season~
なんだか泣きそうだった。
だから、カウンターへ視線を落とし、私は目を伏せた。
知って良かったのか、知らぬままが良かったのか。
スッキリはしたけれど、モヤモヤもあって。
聞いてても言ってても、スッキリした気持ちと複雑な気持ちが絡まっていた。
あの頃はお互いに不器用だったというか――。
臆病だったというか――。
それだけ若くて青かったということなんだろうけど。
初恋って、本当になんでこんなにほろ苦いんだろうって。
――そう思った。
そんな私には、今の逃げ道は、お酒しかなくて。
グラスを空にして、ウィスキーを注いだ。
その直後、晃の手が私の頭に、ポンと乗っかり――
「ごめんな」って。
それだけ言って、手は離れた。
思いもよらなかった晃のその行動に、胸がざわめき始めた。
というより、ざわめきが更にざわめき出して、顔が一気に熱くなった。
「今からでも、うまくいかねぇもんかな――」
切なく聞こえてきたその声に、褪せていた想いが、胸の中で叩き起こされた。
本当に今更なんだけど。
でも、10年以上も前の繋がった気持ちに、嬉しいという気持ちは、やっぱりあって。