彼は、理想の tall man~first season~
「ねぇ――私、直ぐにでも寝たいんですけど」
「はい、却下」
そんな会話をした後、玄関を開けた尚輝は、酒臭ぇな――と、靴を脱ぎながら私に言葉を寄越した。
お酒を飲んだんだから当たり前じゃん、と軽く膨れつつリビングに向かうと――。
「お邪魔してます」
聞こえて来たのは、当たり前だけど中條氏の声で。
相変わらず爽やかな笑みが、そこにはあった。
「こ、こんばんは」
連絡頂いていたみたいで、すみません――なんて、目に映る中條氏に頭を下げた。
本人を目の前にすると、不思議と酔いが醒めていく感覚。
それから二三言葉を交わして、取り敢えず私は部屋に着替えに入った。
明日、車の件で松本さんの所に一緒に行くんだったと改めて思いながら、OLモードの服を脱いで、部屋着にチェンジ。
途端、一気に脱力感に見舞われベッドに腰を下ろした。
――はぁ。
思わずそんな溜め息が漏れる。
結い纏め上げていた髪の装飾品を外して、更に脱力感に見舞われ体をベッドに倒した。
何も考えずに、このまま寝てしまいたい。
晃と飲んだ後に中條氏――。
あんな話をした後だったから、中條氏に会うのは正直しんどかった。