彼は、理想の tall man~first season~

その後、マンションの入り口付近にライトが照らされ。

来たかと思って近づくと、ふらふらしながら美紗がタクシーから降りて来た。


相当酔ってんな。

しょうがねぇ――なんて思っても、結局手を差し出す役割は、今のところ俺しかいないとも思ったりだ。


「なにしてんだよ」

呆れながらそう言った俺に、なんでいるのよ?

みたいな顔して、俺を見る美紗の目は、定まっているようで定まってない。

敦さんが来ていることを告げると、その瞳は明らかに揺れて、なんでか泣きそうな面になっていた。

意味が解らない美紗の表情。

今日はこのまま寝かせた方がいいのか?

いや、でも――美紗の溜め込んで内に籠る性格を考えると、どの道まともに寝られそうにもないだろうと考えた。


晃とは、楽しく飲んだのか?

そうでもないのか?

そこら辺は、ここまで酔う美紗を知らないから、表情だけでは判断出来ない。

取りあえず戸惑いを隠さない美紗を連れ、部屋へと戻った。


 * * *


会話途切れの刹那に、敦さんはテーブルの周りを見る感じで、だけど美紗を視界には捉えていて。

その雰囲気が、なんかいいお兄さんて感じなんだよな――と、密かに俺にそう思わせる。
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