彼は、理想の tall man~first season~

尚輝の運転で、松本さんのいるディーラーへと向かった。


必要な書類は予め用意完了。

人生でも大きな買い物であること間違いなしの大金叩きに、緊張もあったけれど、私は少しワクワクもしていた。


「敦さんも、今日車買うの?」

「もう戦略は立てたから、あとは、松本の出方次第だな」

「こえー。俺、営業でも敦さんだけはお客に持ちたくねぇな」

アハハなんて2人して笑っていて、私は後部座席で頭を窓に預けて、クスッとだけ笑ってた。


「俺も展示車見ちゃったら、欲しくなりそう」

「じゃあ、尚輝が新車買って、この車私にちょうだいよ」

「おい、美紗――お前、まだ酔ってんのか?」

「はい? 素面ですけど?」

「中古だって結構高ぇのに、なんでお前にタダでやらなきゃいけないんだよ」

「いいじゃん、尚輝君はお金持ちだし」

「はぁ? 美紗が思ってるほど持ってねぇよ」

「ならやっぱり車は私が買うから、私に愛の募金してよ」

「お前寝ぼけたこと言ってんじゃねーよ」

「ナビ代だけでもいいから」

「ナビ代って、いくらだよ」

「20万――からのぉ~?」

「からの~じゃねぇよ、ボケ」
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