彼は、理想の tall man~first season~

その後、スーパーで食材や調味料をあれこれ買い。

中條氏のマンションで、簡単に作れる料理を、私は中條氏にレクチャーしていた。


「お塩をひとつまみ入れて、一旦混ぜて下さい。そしたら味見して下さいね」

「はい」

私の言う通り、「はい」なんて素直に従っている中條氏は、とても真剣。

でも、なんだかそれが、私の女心をくすぐる。


「あ!! 洗濯機届く前に、洗剤買っておいて下さいね。いざ届いても、洗剤がないとお洗濯出来ないですから」

「あーそっか。すっかりそういうの頭から抜けてたな」

「ふふっ、あ!! ちょっと火を弱めて下さい」

「え? あのそれって、」

「この矢印のボタンです」

「あーこれね、これか」

本当に慣れないであろうキッチンで、焦る中條氏に親近感がわいた。


「中條さんて、好き嫌いはありますか?」

「んーー嫌いな食べ物か」

「はい」

「セロ・・・・・・リ、かな」

「え?」

「俺、セロリ駄目だわ」

「ちょっ、中條さん、大の大人が子どもみたいなこと言わないでくださいよ」

「それ、姉貴にも言われた」

「あ、すみません――でも、セロリって言われると思わなかったんで」
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