彼は、理想の tall man~first season~

見られていると感じたら、そうなるのは当たり前だ。

私はなんでもない風を装って、頭を数回横に軽く振った。


色々と誤魔化す為に、更に重みが増していた荷物を、逆の手に持ち替えてみたり。


そして、再び思う――なんで、私に挨拶をして来たのか、と。


取引先の人で、向こうは私を知っていたりとか?

だったら、洒落にならないよね。

あくまで、知っている風を装った方が、いいのか・・・・・・。


どうしたもんかと思いながら、手持ち無沙汰で。

懲りもせず、横目でその人を盗み見ていた。


そして、チラリと見えたのは、高級腕時計。


うわ、いい時計してる。

尚輝が欲しがってた腕時計の、更に手が届かない値だった時計だ。

尚輝が見ていた腕時計の雑誌の、これは買えないから無理って言って、諦めの線引きをした無理な方にあった時計。

確か、百万を超えた額だった。

その時計を見てしまったら、なんだか細かい部分も気になってしまって、私はさり気ない風を装って、その人の足元に視線を落とした。


靴もキッチリ磨いてある。

どこまでも清潔感しか感じない雰囲気。


お顔立ちよろしく、服装は長身を生かした身なりで、靴もお洒落感を出すには必要な綺麗さ。

見た目パーフェクトな男だと思った。
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