彼は、理想の tall man~first season~

「味より、食感がどうもダメなんだね」

「食感、ですか――まあ、確かにちょっと確かにクセがありますもんね」

少し照れくさそうに笑った中條氏は、やっぱり可愛くて、意外な一面に胸の奥は更にくすぐられた。

2人で笑っている間に、簡単に出来る卵料理と魚料理は完成。


もう少し自由の利くキッチンなら、もう少しどうにか出来た気もするけど。

不揃いのキッチンで作った割には、まあまあだったかな――なんて、自分を納得させた。


「美味しそうに出来ましたね」

「先生がいいからね」

「いえいえ、そんなことはないですよ。教えても全く駄目って人もいますし。中條さん、意外とお料理向いてらっしゃるんじゃないですか?」

「それはどうかな」


出来ない人は、包丁なんて危なっかしくて持たせられないし、混ぜる炒めるって作業も、不器用さ全開だ。

そういう人に比べたら、結構手裁きは良かったように思う。

卵だってちゃんと割れたし。


「目指せ、料理男子ですね」

「俺は食べる専門がいいけど」

「私もそれがいいです」

「食べる専門家は尚輝か」

「そうですね――尚輝は昔っから、気が向いた時にしか作らなかったし」
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