彼は、理想の tall man~first season~

「あ、ごめん、ご飯冷めちゃうから食べてて」

「いえ、大丈夫です。あの、今後のことを考えたら、電子レンジなんかも必要かも知れないですね」

「そうだね、レンジか――あいつ持ってるかな」


取り敢えず食べようという雰囲気になり、中條氏がワインを注いでくれて、乾杯。

再び、いただきますをした。


私の好きな白ワイン。

姉貴夫婦が旅行に行った、そのお土産なんだけど――と。

そう言った中條氏に見せてもらったワインボトルは、有名な甲州ワインだった。


昨日は流石に飲み過ぎたと自覚している私。

なんだかんだ、雰囲気に飲まされてしまう部分もあるから、飲み過ぎには気を付けないとだと思っていると、中條氏の携帯が鳴った。


「なんだよ飯時に――ちょっとごめんね」

私に断りをいれてくれた中條氏は、「はい」と、応対。

だけど急に「はぁ?」と、不機嫌さを露わにした声を上げた。


――今、来客中なんだけど。

――しかも夕飯食べ始めたばっかだぞ?

――お前明日来るって言ってなかったか?

――ああ、その703号室。

――おぉ、じゃあな。


中條氏は軽く溜め息混じりで通話を終えた。
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