彼は、理想の tall man~first season~
もうこれ以上、余計なこと言わないで――。
そう思ったけれど、もう恋とか関係なくなるからどうでもいい気にもなっていて。
私は早くこの場から抜け出たくて仕方がなかった。
なんの心の準備なきままだった私に突き付けられた、現実。
それは中條氏の義弟が、まさかの晃で。
だから、どうでもいいって、そう考えても、おかしくないだろうって、そう思った。
晃が昨夜これから忙しくなるって言ってたのは、引っ越しで?
晃と中條氏の気だか馬だかが合うようには、私には全く見えないけど。
ってゆうか、中條氏の前でお前とか言わないで欲しいんですけど。
晃に向かって言いたいことが、心の中でぽんぽん生まれた。
ただ、考えなければいけないこともあって、私の頭の中はぐちゃぐちゃだった。
「晃、荷物は?」
「ああ、まだある」
「持って来ちゃえよ」
「うーっす」
中條氏が晃に部屋鍵を渡して、それを説明しながら玄関へ向かう2人。
理想の体格の中條氏の後ろ姿を見ながら、惜しいなと思った。
この期に及んで、そんな感情が私の中にあったなんて、誰にも話せないけれど――。