彼は、理想の tall man~first season~
「晃と敦さんは義兄弟で、そういう間柄なのに、なんで避けるようなこと言い出すんだよ? 絶対におかしいだろ」
「お、おかしいかも知れないけど、私のことは、ほっといてくれていいから」
尚輝はどこまでも納得をしていない顔をしていた。
けど、これ以上どうにも言えない私もいて――
「おい、美紗!?」
尚輝の声を振り切って、部屋へと逃げ込んだ。
中條氏とは、もう深く関わらないでおこうと決めた。
だけど、悪戯にもそれがおかしな方向に動き出すことを、この時の私は知る由もなく。
そして、それは――その日から約2週間が経ち、なんの前触れもなくやって来た。
◆◇◇◇◆
金曜日の夕方6時。
それは、会社の定時が30分前に終わっている事を物語っていた。
「麻倉さんもう上がれそう?」
「はい――あの、他に何かありますか?」
「ううん、大丈夫」
そろそろ帰ろうかなと、書類を片付け終えた時、村岡部長から声を掛けられた。
「部長、先程の資料、メールで送信しておきました」
「早いね、いつもありがとう。本当に助かる」
「いえいえ、そんな」
「今日もお疲れさま。気を付けてね」