彼は、理想の tall man~first season~
「はい、お疲れさまでした。すみません、お先に失礼します」
物腰柔らかな村岡部長が直属の上司で本当に良かった――。
そんな風に思いながら、私は他の社員にも挨拶を済ませ、事務所を後にした。
そして、ロッカーに着いて帰り支度をしていた時に入った一件の着信。
それは、私を妙にドキドキさせた――。
こんな時間に、なんだろ?
そう思いながら、私はゆっくりと通話ボタンを押してみた。
「――はい」
『もしもし、今、大丈夫?』
「はい、大丈夫です。お久しぶりです。先日は、どうもありがとうございました」
電話の相手は、ここ最近――会いたくて仕方ないって感情が、心の中で忙しなく駆け回っていた、中條氏からのものだった。
あの日から特に会う事もなく、連絡を取り合う事もなく――。
私の日常は、その感情を除いては、なんの変哲もない、そんな日々だった。
そんな時の突然の着信だったから、私は激しく動揺した。
『松本が、珍しく土曜に休みが取れたから、飲もうって誘われてるんだけど』
急な誘いで申し訳ないけど、どうかなと。
それは――前に口約束をしていた、松本さんを交えての飲みの誘い。