彼は、理想の tall man~first season~

特に予定もなかった私は、いいですねーなんて、返答をしていて。

ただ、そんな返答をしていたのは、中條氏に会いたいという気持ちが、私の中で大きく膨らんでいたからなんだと思う。

時間が経てば経つほど、誤魔化しようのない気持ちがどんどん膨らんで。

頭の中じゃ、ダメだって警鐘が鳴っているのに。

それでも突き進んじゃうのが恋なのよ――って、智子は言っていたけれど。

本当にそうなんだと、絶賛実感中だったんだ。


中條氏から指定された待ち合わせ場所へ、約束の時間までにと思って準備。

家に帰って着替えるなんて出来ないから、取り合えず更衣室で鏡に向かって髪を整え、メイクを直した。

くたびれたOLだとか、そんな風に思われるのは正直不本意だし――とか、都合のいい理由を見つけ。

私は少しだけ明るいトーンの口紅を塗った。

そんな自分にちょっと呆れもしたけれど、久し振りに会えると思うと、やっぱり素直に嬉しかったんだ。


駅構内、人が溢れる中、背の高い中條氏は見つけやすく。

背の高い女の私も逆に見つけられやすかったみたいで。

少し距離のあった所から、視線は合っていて。

それがなんだか余計にドキッとさせられた。
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