彼は、理想の tall man~first season~
なんとなく、中條氏の隣に座ってしまった。
タッチパネルを操作しながら、美紗ちゃんは何飲む?なんて声を掛けられて。
じゃあ、ビールで――みたいな展開で。
壁に掛けてあるハンガーがあったので、私は2人の上着と自分の上着をそれらに掛けた。
松本さんは、取り合えず定番メニューをザッと頼んだからと言って、漸く落ち着き。
てっきりジョッキで運ばれて来ると思っていた生ビールは、意外にも瓶ビールという展開。
注ごうと瓶に手を伸ばした所、松本さんに先を越されてしまった。
「レディーファーストね」
なんて、爽やかに言われてしまって、私は「すみません」とグラスを持つしか出来なくて。
コポコポコポ~っと、ゆっくりと注がれたビールの音を堪能して。
「お注ぎします」と、松本さんから瓶を受け取った。
「あ、そう? 悪いね~」と、ちょっと機嫌が良さそうな松本さんに、「お前の狙いは、それかよ」なんて――中條氏は呆れたような声を上げた。
「いいじゃんかよ、なかなかありそうでないだろ」
「なにが?」
「なにがって、美人なお姉さんにビール注いで貰えるチャンスなんて、ありそうでないだろって話だよ」