彼は、理想の tall man~first season~

「松本、それ会社ならセクハラ発言」

「え? なに、そうなの?」

おどけていた松本さんにビールを注ぎ終えると、松本さんは「ありがと」と、ニッコリと笑ってくれた。

中條氏にも注ごうと思ったけれど、私は松本さんから瓶を奪われ。

その松本さんは、中條氏に――ほら、みたいな感じで瓶を向けていた。


「おぉ、松ちゃん、それは違くねぇか?」

「んー? 中條は美人にお酌は強要しないんだろ?」

「しないけど、アレだろ。松本に注がれたビール飲むより、美紗ちゃんに注がれたビールの方がいいに決まってんだろ」

そんなやり取りをする2人に笑ってしまった私は、松本さんから、「だってさ」と、そう言われながら瓶を渡された。

2人の視線が同時に私に向き、私は一気に緊張。

そういう中でビールを注ぐなんて、ちょっと手が震えそうだ。


「どうぞ」とか言いながら注いだビールに、なんとなく自分の顔が熱くなるのを感じた。


乾杯をして、そう言えば納車だけど――と。

最初に車の話があって、その間におつまみが運ばれて来たりで暫く落ち着かなかったけれど。

飲み始めて30分も経てば、ほど良く飲みの態勢になれて。
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