彼は、理想の tall man~first season~

私のことなんて眼中になさそうだった尚輝だったけど、一応私の存在はちゃんと認識していたらしく。

私に「おかえり」、なんて声をかけながら、私の手から荷物をさり気なく取り上げた。

それをトランクに入れた後、そのパーフェクト男に助手席に乗るよう誘導し。


そして、美紗は後ろに乗れよ――と。

私のいつもの指定席に、そのパーフェクト男・・・・・・略してパフェ男に、私には有無を言わせず、座らせていた。


「すぐに、分かりました?」

「聞いた通りだったからな、すぐに分かったよ」

「そっすか、なら、よかったっす」


そんな男同士の会話で、車は走り出す。


もう、一体なんなの?

意味不明な会話に、余計にキレたい気持ちで。

だけど、締めていなかったシートベルトの存在に気付き、私は慌ててそれを締めた。


「まだ、落ち着かないんじゃないのか?」

「そんなことないっすよ、」


笑っている尚輝に、再び怒りが込み上がる思いだった。

「俺の方は、ですけどね」なんて付け加えたからだ。


丁度信号待ちになり、ムッとしていると、ミラー越しからの尚輝の視線。

今の会話は、間違いなく引越しのことを言っていると、私は思っていた。
< 23 / 807 >

この作品をシェア

pagetop