彼は、理想の tall man~first season~
私のことなんて眼中になさそうだった尚輝だったけど、一応私の存在はちゃんと認識していたらしく。
私に「おかえり」、なんて声をかけながら、私の手から荷物をさり気なく取り上げた。
それをトランクに入れた後、そのパーフェクト男に助手席に乗るよう誘導し。
そして、美紗は後ろに乗れよ――と。
私のいつもの指定席に、そのパーフェクト男・・・・・・略してパフェ男に、私には有無を言わせず、座らせていた。
「すぐに、分かりました?」
「聞いた通りだったからな、すぐに分かったよ」
「そっすか、なら、よかったっす」
そんな男同士の会話で、車は走り出す。
もう、一体なんなの?
意味不明な会話に、余計にキレたい気持ちで。
だけど、締めていなかったシートベルトの存在に気付き、私は慌ててそれを締めた。
「まだ、落ち着かないんじゃないのか?」
「そんなことないっすよ、」
笑っている尚輝に、再び怒りが込み上がる思いだった。
「俺の方は、ですけどね」なんて付け加えたからだ。
丁度信号待ちになり、ムッとしていると、ミラー越しからの尚輝の視線。
今の会話は、間違いなく引越しのことを言っていると、私は思っていた。