彼は、理想の tall man~first season~

最低限の、感覚的な部分が合うか合わないかで、それ以上の高望みはしない。


「付き合えないかな?」

「――はい?」


それはあまりにも唐突で――。

「どこにですか?」

なんて、聞き返してしまった。


「いや、どこにって、場所云々じゃなくて」

――俺と美紗ちゃんがね、と。

中條氏は、そうのたまった。


それは、つまり、私がイエスと応えれば。

中條氏は彼氏というポジションになる、いわゆる交際の申し込みだったようで。


「あの、えっと――」

私を混乱させるには、充分過ぎる話だった。


中條氏は、尚輝の上司。

それでいて、晃とシェアしている親戚。

2人で飲んだ日から、晃とはそれっきり――宙ぶらりんのままだった私には、即答なんて出来なくて。

喉の奥が変に苦しかった。


何か言いたい――けれど、言えない。

どう言ったらいいのかも、正直解らない。


「こたえは急いでないから、ゆっくりでも、考えてくれると嬉しいかな」

「あ・・・・・・はい」


この人には、どこか余裕があって――。

多分私が断っても、変わりなく接してくれる人なんじゃないかって、思った。
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