彼は、理想の tall man~first season~
「父の収入も、昔に比べたら今は下がったみたいですけど。それでも父の年収を考えたら、父からしたら私達のそういう心配なんて余計なことで――逆にプライドを傷つけてしまっていたのかなって、今になるとそう思いますけど」
そういうのもあって、色々な物を買って来てくれてたのかな、とか。
今になると、思うことはたくさんある。
「因みに、美紗ちゃんは、なんのバイトしてたの?」
「私は、ピアノ教えたり。あとは夜、バーで弾いたり」
「え? ピアノ弾けるの?」
「父親が女の子に習わせたい習い事ナンバー1って良く聞きますけど、本当にそんな感じで、父に勧められて始めました」
「今でも弾いてるの?」
「弾けてもたまにですかねぇ。実家に帰った時とか、アルバイト先だったバーに、たまに飲みに行って、弾かせてもらったりくらいかな。やっぱり、社会人になると色々厳しいですね」
「聴いてみたいな」
「ぇ?」
「今度さ、そのバーで弾いて聴かせてよ」
「あ・・・・・・はい」
場所知らないから後で教えて、と――そう言われ。
私が返事をした直後、中條氏の携帯が鳴った。