彼は、理想の tall man~first season~
車に戻る途中で中條氏が、松本がさ、と。
先程の電話の話なのか、そう切り出して来た。
同伴者にも余興で何かやれとかって事は、まさかないとは思うけど・・・・・・。
改まれてしまうと、一体なんだろうとかなりドキドキで、軽く身構えてしまった。
「ピアノ弾ける子をさがしてるみたいなんだ」
「――え?」
物凄く言いにくそうに、だけどそう言って来た。
なぜにいきなりピアノ?
そう思っていると。
どうやら披露宴まがいの2次会の余興で、新郎の友人代表が弾き語りで歌うというプランが持ち上がったらしく。
だけど今からじゃ、本人が必死にピアノを練習しても、とてもじゃないけど無理だという事に気付き。
それなら誰か弾ける人を見つけるか――みたいな感じになったということのようで。
もしかして、さっきの学部の女の子云々の話は、これの件で?
なんとなく、先程の話が、点から線になっていった。
「さっき、丁度ピアノの話してたから、いるって言いそうになっちゃったけど、俺が弾く訳じゃないから」
つまりは、あれか。
知らない人の中で、弾くということか。