彼は、理想の tall man~first season~

ただ、それってバイトの時と、状況は変わらない気もする。

新郎さんの友人代表が、何を歌うのかは知らないけど。

弾くだけでいいなら、引き受けてもいいような気がした。

まあ、中條氏はそこまで聞いては来ないけど。

私は中條氏に同行して、その会に出席する予定な訳だし。


「誰もいないんですよね?」

「え?」

「その、ピアノを弾けるって人は」

「ああ、そうみたい」

「それなら・・・・・・私、やりましょうか?」

「いいの?」

「はい。でも、私で良ければですけど」

「いや、本当にいないみたいだから、助かると思うよ」


人前で弾くのは、まぁまぁ慣れっこではある。

多少、緊張はするけど。


「結婚式ってなると、ちょっと責任重大ですかね」


ただ単に、弾けばいいって訳ではないもんね・・・・・・。

まがいと言えど、結婚式の披露宴みたいなものだ。

安請け合いはしたくないけど、でも――困っているのなら。

弾けるか弾けないか、二者択一でいったら――弾ける。


まだ多少、練習出来る時間もあるし、大丈夫でしょと、私は自分に言い聞かせた。
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