彼は、理想の tall man~first season~
「あの、松本さんと少しお話しさせて貰えませんか? 確認しておきたいことがあるので」
「ああ、ちょっと待って」
その時、丁度車に辿り着いた。
「キーある?」
そう聞かれて、はい、なんて頷いてキーを取り出すと。
「交代ね」
キーを取り上げられ、そう言われ、私は助手席に座ることになった。
「おー、松ちゃん? ピアノ弾ける人いたけど、何歌う気でいるの?」
――随分ベタなの歌うんだな。
そんな会話をしていた中條氏はクスクスと笑い、ちょっと代わるわと、私に携帯を寄越した。
「もしもし、美紗です・・・・・・昨日はご馳走さまでした、ありがとうございました」
『いやいや、こっちこそ楽しいひと時をありがとね。それよりさぁ、』
「はい?」
『昨日は中條と愛育んだの?』
「えっ? ちょ、ちょっと、松本さん何言ってるんですか!!」
アハハと笑いながら、ごめん冗談、なんて言われてしまって。
私はただひとり顔を赤くする羽目になり、その状況にも恥ずかしい気持ちになった。
『所で、ピアノ弾けるって、美紗ちゃんのことなの?』
「――はい」