彼は、理想の tall man~first season~
「晴れてて良かったですね」
「展望デッキに出るのなんて、小学生ぶりかもしれないな」
大人になって、ゆっくり来るのも悪くないもんだね、と――中條氏は空を見上げた。
子どもがキャッキャッとデッキを走り回る姿や、フェンス越しに飛行機を見ている親子。
ゆっくりカフェで寛いでいる人も居る。
私は遠くに見える、これから飛び立つであろう飛行機を見ていた。
飛行機特有の轟音。
父親と離れることが嫌で、何度もそれを聞いては泣いていた私が、今ではそれが好きだとか。
ちょっとおかしくなる。
まだ私が実家で生活をしていた時、少しだけ酔った父親が、密かに語った、夢。
それを、叶えてあげられるのかは解らないけど。
体力と判断力。
それから、強靭な精神力が必要とされる世界で。
もうそろそろ、一線から退いてもいいんじゃないの?
そういう歳になった父。
今、何故その父の夢を思い出したのかは解らないけれど。
踏み出すキッカケとしては、思い出して良かったんじゃないかと、中條氏の広い背中を見て思ってしまった。