彼は、理想の tall man~first season~

暫く2人して、遥か遠くまで飛び、見えなくなった飛行機の方を黙って眺めていた。

お互い何を思って、その名残を追って見ているのかは分からないけど、同じ方向をただ風に吹かれながら、見ていた。


――――時だった。


「今日、晃となにかあった?」

「――え?」


突然、空を眺めたままの状態で聞かれたその問いに。

心臓がえぐられたんじゃないかってくらい、私は鈍い痛みに襲われた。


「出掛け前、晃に声掛けたんだけど、不貞寝してた」

「そう・・・・・・ですか」

「一応、起こしてちょっと話したけど」


そこで一旦言葉を止めた中條氏に、私はこの後一体何を言われるのか。

変な緊張感に支配されて、立っているのが精一杯だった。


それは、私が誰にも知られたくないと思っている、晃との関係を晃が中條氏に言った可能性があって。

今朝とてつもなく不機嫌だった私と喧嘩をした晃が――私にとって予見せぬ言動に出たとしても、なんらおかしくない訳で。

普段は言わないが鉄則だったとしても、人の怒りなんてそうなってしまえば関係ないものだ。
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