彼は、理想の tall man~first season~

ビジネスマンは常に時間に追われているから、ゆっくり出来る時間なんて、そうはないんだろうな。

私はどこかに行くという目的がなくても、空港で過ごす時間てそれなりにあったけれど――。


「いつも下の時計台の前の軽食屋で済ませてたから、」

「え?」

「実はロビーの別階で食べるの初めて」

「そうだったんですか」

「だから凄い新鮮な感じ」


デッキからここまでの移動は、スマートに私を誘導してくれていた感じがあったけど。

特に場慣れしていた訳ではなかったのかな。

ということは、方向音痴ではない?

まあ、営業マンなら、色々な所に行き慣れてはいるんだろうけど。

それでも方向音痴の人って、あれー?ってなるものだろうし。

そういうのを、そつなくこなせてしまう人って、世の中いるけど。

そっち側の人っぽい中條氏に、私の中で好感度が増した。


配線音痴でもなく、方向音痴でもない。

それだけで頼もしいと思える。

これで運動音痴とただの音痴でなければ、最高にいいなと――私は頭の中で、勝手な理想を並べていた。
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