彼は、理想の tall man~first season~
「んー、美味しかった。ごちそうさまでした」
「本当に、美味しそうに食べるよね」
食べ終わってお箸を手元からお膳に戻すと、中條氏からニッコリ微笑まれながら、そう言われた。
見られていたと思うとちょっと恥ずかしいけれど――悪い気はしなかった。
再びデッキに出る前に、空港内をプラプラと散策。
食べた後はちょっと休んで、動くに限る。
「煙草吸い行く?」
「え? あ、いいです、大丈夫です」
吸いたいのは山々だけど。
空港の喫煙所と考えただけで、吸う気が失せていた。
「別に俺も吸うから、遠慮しなくていいのに」
「してないですしてないです。空港の喫煙所って、どうも苦手で」
「若い子あんまいないもんね」
「それもありますけど、」
「ん?」
「煙過ぎて、ちょっと」
「あー、確かに」
入れ替わり立ち替わり、喫煙目的でしか出入りのない場所。
そんな場所なだけあって、あの狭い空間が綺麗な空気になることはまずない。
物凄い煙たい空間で煙草を吸っても、ちっとも美味しさなんて感じられない。