彼は、理想の tall man~first season~
「私が合否の判定なんておこがましさの極みでしかないですけど、自分が――というのは、全く気にならなかったです」
「そう? なら良かった」
口端を軽く上げて、満足そうに笑った中條氏。
その顔に、私はすっかり見惚れてしまった。
空港にはいるけれど、どこに旅立つでもなく、誰かを出迎えるでもなかった私達。
中條氏からの思いもよらなかった考えに、自分の気持ちの変化に気付かされていた私は、柱の陰で頬を緩ませていた。
気になったのは中條氏への視線で、自分がどう思われているだとか、考えもしなかった。
私が描いていた理想の――背が高い男性の隣りというのは、思っていた以上に心地がいいものなのかも知れない。
「そろそろ、またデッキに行ってみる?」
頷いた後、フッと笑って歩き出した中條氏に、その瞬間スッと手を握られた。
ちょっと恋人っぽいそんな感じに、完全にドキッとさせられていた私。
もう彼氏なんだから、手を繋ぐ行為はおかしなことではないけれど。
中條氏からのそれは――私には意外な出来事だった。