彼は、理想の tall man~first season~
物事を前向きに考えられているように、思えた。
勿論、あの事を――今朝の晃との事を忘れている訳じゃない。
ただ、過去は変えることなんて出来なくて。
ずっとそこで踏み止まっていても、なんに解決されやしない。
ただの勢いでも、自分の選択は間違っていないと、確かにあったこの気持ちに正直に生きて行こうと思いながら――
「私、」
「ん?」
「中條さんのこと、なんて呼んだらいいですか?」
「え?」
「あの、なんとなく、中條さんて呼ぶのは――余所余所しいかなぁって、思って」
先ずは距離をもっと縮められるような――そんな努力をしようと思った。
「さん付け以外かな」
「え? それって、敦さんて呼ぶのもダメって事ですか?」
「んー、ダメだね」
(っ、どうしよう)
「ついでに、敬語も余所余所しいからダメだね」
「えっ?」
「俺、最初っから馴れ馴れしいのはどうも好きになれないんだけどさ、」
確かにそれは、私も思うことがあったから、妙に納得してしまった。