彼は、理想の tall man~first season~

さん付けが、ダメだと言われてしまうと。

残る選択肢は、2つか3つになってしまう。


うーーーん。

どうしよう。

『敦』

そんな呼び捨はちょっと無理だし。

「敦くん・・・・・・とか? いや、いい大人に向かって、君付けとか絶対に失礼だし」


ひとり勝手にそう思っていたのに――

「君付けなんて、少年に戻ったみたいだな」

そんなこと言って、中條氏は笑い出した。


もしかして、全部聞こえていたのかと思い、ゾッとする私。


いやいや、少年に戻るとか、そういうことじゃなくて。

聞いていたなら、他に言うことがあるんじゃ。


「俺は、美紗ちゃんのことは、今のところ美紗ちゃんて呼ぼうかな」

「え? あ・・・・・・はい」


本当は、呼び捨てにしてくれないかな――とか、ちょっと期待していたんだけど。

残念。

でも今のところ――ということは、その先それはどうなるか未決定?

まだチャンスは残っているし、始まったばっかりだし――とかなんとか無理矢理そう言い聞かせて、取り合えず頷いた。
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