彼は、理想の tall man~first season~
「尚輝も晃も美紗ちゃんのこと呼び捨てだから、同じなのは、ちょっとね」
ちゃん付けの理由って、そういう事?
それならそれで、それは逆に特別っぽいからいいかな――なんて、単純にそう思った私。
「君付けで俺の事呼ぶ人間なんていないから、その方がいいかもな」
「そうです・・・・・・あ! そうだね」
敬語NG。
そう気付いて、無理に頑張ってみた。
そして、それに気付いた彼は、「今からスタートね」なんて、笑っていた。
「本当に敦君て呼んじゃって、いいんで・・・・・・いいの?」
「いいよ」
やさしい声色で言われたその「いいよ」に――初めて恋したんじゃないかってくらい、ドキドキした。
大人の男の余裕というか、なんというか。
仕草も立ち振る舞いも話す声のトーン全てが落ち着いている。
優しく握ってくれている手に、ドキドキもさせられる。
でも、どこか落ち着かせてくれる、包み込むような握り方。
なんとなく気恥ずかしくなって照れてしまった私に、彼は優しい眼差しで、そして柔らかくフッと笑った。
そして、再びデッキに出ると、青く広がる空が私達を出迎えてくれた。