彼は、理想の tall man~first season~
「いい天気だなぁ」
「本当にそうで――そうだね」
そんな簡単には慣れることのない敬語NGトーク。
私も中じょ――敦君も思わず笑ってしまった。
これじゃあ、ちょっとやそっとじゃ、簡単に距離を縮められないかも。
根気強く頑張らなければ。
「あ・・・・・・そうだ。電話して来てもいい、デスカ?」
「電話?」
私が言ったことに、敦君は首を傾げた。
「バーのマスターに確認しておこうと思って」
「ああ、例のピアノの?」
「はい――いえ、うん」
繋いでいた手を解いて、バッグの中から携帯を取り出すと、着信が2件。
誰かと思って開いた携帯には、実家と表示されていた。
実家からちょこちょこ電話はあるけど、土曜日の昼間に電話なんて珍しい。
そんな風に思っていると、手の中で携帯画面が丁度着信中へと切り替わった。
着信画面には、実家と実家の電話番号が表示され。
「もしもし?」
私はタイミング的にもそれを取ってしまった。