彼は、理想の tall man~first season~

「いい天気だなぁ」

「本当にそうで――そうだね」

そんな簡単には慣れることのない敬語NGトーク。

私も中じょ――敦君も思わず笑ってしまった。

これじゃあ、ちょっとやそっとじゃ、簡単に距離を縮められないかも。

根気強く頑張らなければ。


「あ・・・・・・そうだ。電話して来てもいい、デスカ?」

「電話?」


私が言ったことに、敦君は首を傾げた。


「バーのマスターに確認しておこうと思って」

「ああ、例のピアノの?」

「はい――いえ、うん」


繋いでいた手を解いて、バッグの中から携帯を取り出すと、着信が2件。

誰かと思って開いた携帯には、実家と表示されていた。

実家からちょこちょこ電話はあるけど、土曜日の昼間に電話なんて珍しい。

そんな風に思っていると、手の中で携帯画面が丁度着信中へと切り替わった。


着信画面には、実家と実家の電話番号が表示され。

「もしもし?」

私はタイミング的にもそれを取ってしまった。
< 327 / 807 >

この作品をシェア

pagetop