彼は、理想の tall man~first season~
「突然申し訳ございません。初めまして、私、中條と申しますが――」
携帯を耳に当てて、少ししてからそう切り出した彼。
次の瞬間、お母様に代わっていただけませんか――と。
そう言って、私が立っている所から、少し離れた。
何を言うのかな、なんて考えてしまうと――物凄くドギマギ。
でも、今のこの状況を、私はどうすることも出来なかった。
「お休みのところ、突然申し訳ありません。初めまして、私、中條と申しますが――」
そこまでは私の耳にも届いた。
けれど、私に背を向けていた彼は、数歩また数歩と、この場から離れてしまい、なんとなく付いていける雰囲気でもなかったから。
その彼の背中を、瞬きしながら見ているしか出来なかった。
きっと2回目の中條と申しますが――と、言ったのは、母に対しての挨拶なんだろうけど。
何を話しているのか物凄く気になる。
でも終わるのを待つしかない。
あんまり背中に視線をぶつけ過ぎるのもどうかと思って。
着陸した飛行機を見たりして、私は自分なりに、他へ気を向ける努力をしてみた。