彼は、理想の tall man~first season~
「敦さん、美紗にはそれ禁句」
「え、」
今までどこか余裕のあった中條氏は、私の顔を見るなり少し焦った感じで。
「ごめんね」なんて、謝って来た。
でも、焦って謝って来た割に、爽やかさはあって。
いい男独特の、妙な嫌味っぽさがまるでなかった。
逆に――寧ろその爽やかな雰囲気に、ドキッとさせられていたくらいで。
自分の心臓の弱さと、その笑顔に無意味にムカついた。
ドキッとなんて、久々で。
さっきはときめいたりもしていたから。
なんでって気分が込み上げる。
普段ちょっとやそっとじゃ、反応しない自慢の心臓なのに。
本当に、なんでよ―――って気分だ。
「でもさ、本当にスタイルいいし、禁句にするような事でもないと思うけど?」
中條氏は私の機嫌を伺うような感じで。
尚輝と私を交互に見ながら、そんなことを言って来た。
でも、だったら知らない世界を教えてあげておこうかな――とか、上から目線にも思っていた私は、口を開いた。
「あの、世の中って、そう思ってくれる男の人ばっかりじゃないんですよね」
人間の本音なんて、どこでどうなのかなんて解らない。
だから、私は自分で見た物しか信じない。