彼は、理想の tall man~first season~

人の言葉も人の心も、本物なんて、全く解らない世界。

今さっきの中條氏の言葉が、喩えばいい意味でのお世辞であっても、時に嫌味っていうのも存在していて。

女の微妙な長身は、男には基本的には、受け入れられない現実があるんだ。

男の長身は、それが利に繋がっても、女は基本、女として損をするだけ。


「背が高いってだけで、女枠からだって簡単に外されるんですから」


昔からそう。

両想いになれたとしても、最終的には、背が高すぎて落ち着かないとか言われるし。

そういう相手が次に付き合う子は、大抵小さな女の子。

別に背だけが原因じゃなくて、私の性格にも問題はあったんだろうけど。


かつて「自慢の彼女だよ」なんて、甘い言葉を言われたこともあった。

でも―――

『俺、1年の麻倉と付き合ってんだ』

『マジで? 麻倉って、あの麻倉美紗? すげぇじゃん!』

『あれは連れて歩くには、俺の男度も上がるからなー』

『うわ、』

『お飾りで隣りに置くには栄える女。いるじゃんそういう女』

『出た、モテ男維持の努力』

『早くヤらしてくれりゃ、いいけど』

『お前、サイテーだな』
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