彼は、理想の tall man~first season~

「おい、どこ行くんだよ?」

「さっき買い忘れたから、煙草買いに行って来る」

「はあ? お前、こんな遅くに何言ってんだよ」

「いやいや、私には死活問題だし」


実際、煙草がなくなった訳ではなかった。

あと数本はあった。


ただ――雰囲気的に居辛くなったんだ。

あまりにも敦君は私に無関心に思えたし。

まあ、別にどうこう言って欲しいとかでもなかったけど。

兎に角、お酒は楽しく飲みたいって思ったから、私なりのインターバルの取り方だった。


だけど――それが思わぬ方向に向かったのは、

「んじゃ俺が一緒に行ってやるよ」

そんな晃のひと言だった。


驚いた私の斜め前に座っていた敦君が、「俺が行くから2人でゆっくり飲んでろよ」だなんて言いながら、立ち上がってしまったのだ。


「あの、ゆっくり飲んでて下さい! 私、ひとりで大丈夫ですから」

今日は、もうこれ以上、私の気紛れに付き合ってもらうのは、悪い気がした。

空港まで付き合わせてしまったし、さっきも買い出しに付き合ってもらって。
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