彼は、理想の tall man~first season~

玄関に向かうと、敦君は先に靴を履き終えていて、私は慌ててサンダルに足を通そうとしたけれど。

なんだか足元が怪しいかも――そう思って、スニーカーに足を入れた。

流石に酔って転ぶとか、したことがないけど。

なんとなくこっちの方がいいような気がした。


私がスニーカーを履いている途中で、玄関を出た敦君は、ほんの少しだけドアを開け、私が出ようとする時、ドアをスッと開け広げてくれて。

やっぱりなんだか気の利く人だと思いながら、「すみません」と、私が口にすると。

「これで減点3だからね」

――と。

さっきからなにを言っているんだろうと思った私も、余所余所しい会話で減点1。

減点10で罰ゲームということを思い出して、ゲッて思った。


本当に容赦ないというか――手厳しい。

早く慣れないと、そう思いながら、玄関口から離れた。


それにしても、今日は飲まない日って決めていたはずなのに、だいぶ飲んでしまっている。

自制心のなさに軽く凹みながらエレベーターに無意識に足を向けて歩いていた私は――ドンッと。

気付けば敦君の背中に、頭をぶつけていた。
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