彼は、理想の tall man~first season~

1のボタンと、閉のボタンを押してくれた敦君。

エレベーターはグンと沈んだ感覚を私に与えて降り。

普段は感じないけれど、この感覚に、今日はなんだか気持ち悪いと思ってしまった。


ジッと敦君の背中を見ながら、下に着くまで互いに無言。

変なドキドキは、1階に着いた所で治まることはなかった。


あのまま、もしもエレベーターが来なかったら。

あのまま、キスをしていたかも知れない。

その余韻は、私をおかしくするには充分だった。


もうすぐ25歳の私と、30歳である敦君は、考えてみれば大人の恋ってやつで。

しても不思議ではない関係。


気付けば私は――敦君の腕に自分の手を絡ませて。

念願だった腕組みを、理想の背の高さの男前にしていた。

それに気付いたのは、「酔ってる?」と。

間近で聞こえて来た敦君の声に顔を上げた時。

その瞬間、火が出そうなくらい顔が熱くなったのは――酔っていたからなのか?

それとも、彼にときめいたからなのか?

どちらにしても、彼が好きだという事は現実でしかない。
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