彼は、理想の tall man~first season~
「煙草、3箱で、手ぇ打つ」
「それなら、もう買って来た」
「え?」
あんまり部屋に居っぱなしも失礼だから行くぞ、って。
そう言ってリビングに向かった尚輝を、私は追った。
そして、コンビニの袋から「ほら」なんて言って、私の吸っている煙草を3箱どころか、尚輝は1カートン差し出して来た。
私が家で他人と交流するのを嫌だと知っている尚輝。
釣り釣られな関係もどうなのかとは思いつつも、事前準備に抜かりなしだった尚輝を、やっぱり流石だと思った。
「あ、ありがと」
受け取ったということは、買収されたということ。
あまり気は乗らない、けど――中條氏は尚輝の上司だし、家族としては、お持て成しをしなければだ。
さーてと、なんて言いながら、キッチンに向かう尚輝は、どこか足取りが軽やかで。
煙草1カートンはラッキーって気分だったけれど、一旦部屋にそれを置きに戻った私の足取りは、なんとなく重かった。
部屋の窓を開けて、取り合えずバッグの中から煙草を取り出して、着火。
壁に軽く体を預けて、風を感じながら、白い煙をふーっと吐いた。