彼は、理想の tall man~first season~
あとは、見積書の作成と、在庫確認と部材の納期確認。
伝票整理まで手が回れば御の字かな。
夜道を歩きながら、明日の仕事の流れを頭の中で整理。
明日もハードだと思うと、早く帰ってベッドに潜り込んでしまいたい気持ちが強くなり、歩くスピードを上げた。
そして、その日もその翌日も、私から敦君に連絡をすることがなければ、当たり前のように向こうから連絡はなく――。
「あんだか、よく分かんねぇ恋愛してんなぁ」
「そもそも、付き合うって、その定義が私には良く解らない」
金曜日、会社が終わって向かったBARのスタッフルームで、私はマスター相手に愚痴っていた。
「そろそろ店開けるから、早い所着替えとけよ」
「え――私、今日は弾かないでしょ? バイトの人は?」
「あ? じゃあ、お前今日飲んだ分、金払ってけよ?」
「えー、私からお金取るの?」
「ったりめぇだろ、ボケ」
「ケチー! 久々に来たんだからいいじゃん」
「あぁ? こっちは酒代で生計立ててんだよ。弾かねぇなら、金は取る」
口の悪いマスターは、煙草をふかしながら部屋を出て行った。