彼は、理想の tall man~first season~
「美紗が奏の先生だったってことは、美紗が奏の――初恋物語の美人ピアノ女講師なのか?」
「え!? ちょ、ちょっと!! なにその安っぽいAVのタイトルみたいな変な呼び名」
「うわー、マジかよ。あん時のあれは美紗の話だったのか」
和君は面白い物を見るとでも言ったらいいのか――。
カウンターの中に立っていたから、佇まいはしっかりとした感じに見せていたけれど、肩を震わせて笑っていた。
よりによって美紗が初恋って、とか――失礼なことを言って、和君は尚も笑っていて。
「――えっ!? っていうか、初恋ってなに?」
私は不可解な和君の発言に、引っ掛かった。
「はぁ? だから、奏が美紗のことを好きだったって話だろ」
「なに、それ? そんな話、私知らないんだけど」
「マジか?」
「う、ん」
本当にそうだったのかも解らない話を、ここでこうやって本人抜きに話すのって、どうなんだろう?
だけど、和君が再び口を開き、私は私でそれに反応していた。
「それって、」
「それって?」
「美紗が気付いてなかっただけじゃねぇの?」
「――へっ?」