彼は、理想の tall man~first season~
chapter.22
「時間持て余してんなら、連弾でもして遊ぶかー?」
暫くソファーに座ったまま譜面を見ていると、マスターがノックもなしに入って来た。
「連弾って、冗談でしょ?」
「弾いてりゃ、嫌でも感覚思い出すだろ」
私の隣にドカッと座ったマスターは、テーブルに置いていた、私の煙草を勝手に吸い始めた。
「お前、男出来たんじゃなかったのかよ?」
「え? なに、急に」
「煙草、やめねぇのか?」
「別に、特にヤメろとか言われてないし」
「男も煙草吸うのか?」
「普段の生活はよく分からないけど、飲む時は吸うかな。んーでも、普段も吸うようになったのかな」
ほぉん、と――煙草をくわえたまま興味なさそうに、マスターは喉を鳴らし返して来た。
「てか、仕事中でしょ? サボってると和君に怒られるよ?」
ちょっと感傷に浸っていたかった私は、マスターをここから追い払おうと試みた――けれど。
「俺が給料払ってんだぞ。カズに文句は言わせねぇ」
Piano's Bar 嬰 ‐えい‐
ここのオーナー様は、どうにもこうにもオレ様だ。