彼は、理想の tall man~first season~
「男に連絡してみりゃいいじゃねぇかよ」
「いや――からかわれただけかも知れないし」
「はぁ?」
「だから、無理にこっちから追うのはどうかと・・・・・・」
「んなこと言ってっと、本当に逃げられるかも知んねぇぞ」
「・・・・・・」
もう既に逃げられてる可能性もあるけど――ってまぁ、本気でそう思ってる訳でもないけど。
でも、本当にシャレにならない状況なのかも知れないから、なんて返したらいいか解らない。
「いい男か?」
「え――うん。私の理想を画にかいたような」
「美紗の理想か。どうせ顔もイケメンなんだろ?」
「・・・・・・まあ」
「おめぇは昔っから面食いだもんなぁ」
「え? そう、かな?」
「連れて歩いてた男、世で言うイケメンばっかだったろ」
マスターにはバイト時代に、理想の男性像を語ったことがあった。
当時、そんな奴いる訳ねぇだろって散々に言われたりもしたから――。
多分この人の記憶力なら、それを憶えているんだろう。
少しのやり難さを感じつつも、私は気を紛らわせる為に、煙草に逃げた。