彼は、理想の tall man~first season~

それだけでうまくいくなんて、先ずあり得ないし。

私だって、本気でそんなこと思ってない。

男と女、そんな簡単じゃないって解ってる。

だけど、その後の話の流れが私には重要で、マスターから聞いてみたい話だった。


「努力って、例えば?」

「おめぇは、質問ひとつじゃねぇじゃんかよ」

「あ、本当だ。いやいや、ついでにお願いしますよ」


顔の前で手を合わせて笑った私に、仕方ねぇって顔をして、マスターは灰皿で煙草をもみ消した。


「それは相手を知る努力だったり、相手を思いやる気持ちだったり」

「他には?」

「他か? 他は――相手に気持ちを伝える努力だな」

「――相手に気持ちを伝える、努力、か」

「別に努力なんかしなくても、本当に言いたい気持ちなんてのは――本気で相手の事が好きなら、勝手に口から出るもんなんじゃねぇか?」


多分そこからして、私はダメなんだろうな。

相手に気持ちを伝えるのは、昔から苦手だし。

読み取れもしない。


「そういうのが無理だって奴でも、自然と行動にも出るもんだろ」

「そう、で、すよねぇ」
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