彼は、理想の tall man~first season~

――なんだろう。

なんか、好きって気持ちが、本当にあるのか解らなくなる。

自信がなくなって来た。

でも、多分好きは好きなんだけど。

順調でないと、気持ちも盛り上がらないとでも言ったらいいのか。

そんな微妙な心持だ。


「まあでも、自分の気持ちに素直に正直に、それが一番だろ」

「それ、一番難しい」

「アハハ、確かにな。美紗ならそうだろうな」


マスターとの、こういうトークはとても懐かしくて、大学時代に戻ったみたいだった。

ただ、あの頃と質問の中身は多少変わったけれど、あんまり自分自身が成長していないことに気付く。

――はぁ。

ついつい溜息が出る。


「いいか、運転に必要なのは“だろう運転”だけど。“だろう恋愛”は、そう考え始めた時点で危険信号だからな」

「だろう恋愛?」


いきなり訳の解らないことを言いだしたマスターだった。

けれど、私は単純に興味が湧いた。


「相手が今こう思ってる“だろう”とか、テメェの頭ん中だけで考えて物事決めてたら、うまくいくもんも、うまくいかねぇってことだ。解るか?」

「――なんとなく」
< 418 / 807 >

この作品をシェア

pagetop