彼は、理想の tall man~first season~
――なんだろう。
なんか、好きって気持ちが、本当にあるのか解らなくなる。
自信がなくなって来た。
でも、多分好きは好きなんだけど。
順調でないと、気持ちも盛り上がらないとでも言ったらいいのか。
そんな微妙な心持だ。
「まあでも、自分の気持ちに素直に正直に、それが一番だろ」
「それ、一番難しい」
「アハハ、確かにな。美紗ならそうだろうな」
マスターとの、こういうトークはとても懐かしくて、大学時代に戻ったみたいだった。
ただ、あの頃と質問の中身は多少変わったけれど、あんまり自分自身が成長していないことに気付く。
――はぁ。
ついつい溜息が出る。
「いいか、運転に必要なのは“だろう運転”だけど。“だろう恋愛”は、そう考え始めた時点で危険信号だからな」
「だろう恋愛?」
いきなり訳の解らないことを言いだしたマスターだった。
けれど、私は単純に興味が湧いた。
「相手が今こう思ってる“だろう”とか、テメェの頭ん中だけで考えて物事決めてたら、うまくいくもんも、うまくいかねぇってことだ。解るか?」
「――なんとなく」