彼は、理想の tall man~first season~
「んだよ、なんとなくって」
「なんとなくは、なんとなく、ですよ」
全てに理解を示してしまうと、マスターは話を終わらせてしまう。
だから時には振りも必要で、私は曖昧に返した。
「例えば――そうだな。男の仕事が忙しい“だろう”って、勝手にテメェで決め付けてたとすんだろ?」
「うん」
それって、今週の私だ――。
「んで、男は男で、相手がそれを解ってくれてる“だろう”って考えてたとする」
「う、ん」
「忙しいか忙しくねぇかは、お前じゃなくて、男が決めることだろ?」
「――うん」
「電話が掛かって来て、忙しけりゃ、忙しいってことには変わりねぇけどな。何分かでも話す時間はあるかも知れねぇ」
「そう――です、ね」
「まあ、中には忙しいからって片付ける奴もいるかもしんねぇけどよ」
「うん」
「そん時は時間がなくてまともに話すの無理でも、電話で多少声が聴けたってだけで、安心する場合だってあるし。後でちゃんと時間を作って電話すりゃいい話だし」
「――うん」
「生きてりゃ、どうにでもなんだよ」
ああ――やばい。
境界線を、越えてしまった気がする。